小説「こはねとサンタクロース」1
こはねとサンタクロース
秋月十紅/著
「今年こそサンタさんに逢っちゃうんだ」
雲一つ浮かばない青白い月光が天に。今夜はクリスマスイブ。
その天から神秘的に照らす先には——。
ドールハウスのようでロマンチックなお姫さまが眠っていそうに華飾された部屋で心羽(こはね)は五歳のクリスマスを迎えようとしている。
枕元には、両親が心羽の為に夕食時ささやかなクリスマスパーティを開いてくれて時に着せてくれた女の子用サンタクローススーツが綺麗にたたまれ枕と並んで置いてある。
心羽の両足が入る位の大きな靴下も忘れずに。
その靴下には、二十五日の朝には毎年プレゼントを贈ってくれるサンタへのお礼と願いを込めた歪ながら大切な金色の折り紙で折ったサンタクロースと銀色の折り紙で折ったトナカイが付いたメッセージカードが添えられている。
心羽は一目サンタに逢ってみたくてフリルたっぷりのサラサラシーツの中で、バタバタと手足を動かしたりグリングリンと頻りに寝返りを打ってみたりしてサンタの登場を待ちわびる。
今晩訪れるという赤い服のお爺さんに思いを馳せながら。
遊びに行きたいのを我慢した。
夕方まで昼寝をとった。
小さな指を一つ二つと指折り準備して来た事を思い返す。
……そんな時だった。
微かに心羽の部屋に近付く足音がしたのは——。
『今日は早く寝るから』と和やかに話した両親はもう自室で寝ているはずなのだ。
心羽はそっとシーツを頭まで被り、バタバタと暴れた所為で乱れた両親から買い与えられたビスクドールが着ているようなひらひらのパジャマを整え身繕いをする。
こんな深夜まで起きている事が未知の体験。これから起こる事も当然。
サンタとの御対面に胸を膨らませ、薄い胸に手をあてながら深呼吸をした。
今はもう眠さよりも好奇心が勝ち、一種の興奮状態の中。
複数の足音がドアの前で止まり、
……カチャ。
ドアが開いた瞬間、シーツの中でとっさに手で口を塞いで息を殺し、ぎゅっと目を瞑り『ボクは良い子です。良い子がここで寝ています』とサンタへ訴えかけながら迎える心づもりを加速させた。
部屋に入ってからはあまり足音を立てずに近付く二人のサンタはベッド際まで近付いて来る。
お爺さんと聞いているので驚かさないように、そっとシーツから抜け出しメッセージカードを手渡そうとした瞬間——
母親の不機嫌そうな声がした。
Web拍手です。ここでのコメントは公表されないのでこっそり囁いてくださる方はこちらからどうぞ!
また、クリックしてくださるだけでも嬉しいです!
| 固定リンク
「小説 「こはねとサンタクロース」」カテゴリの記事
- こはねとサンタクロース9(2009.05.10)
- 小説「こはねとサンタクロース」8(2009.03.05)
- 小説「こはねとサンタクロース」1(2008.11.27)
- 小説「こはねとサンタクロース」2(2008.11.30)
- 小説「こはねとサンタクロース」3(2008.12.05)

