小説「こはねとサンタクロース」2
こはねとサンタクロース 2
秋月十紅/著
その不機嫌を引き継ぎ父親の声も。そして、不可解な会話を始めた……。
「寝たかな? この子」
「ああ。顔はお前に似て可愛いのに。なんで女の子じゃないんだよ」
ここはドールハウスのように華飾された部屋。天涯付きのベッドの中央には我が子が眠る。その枕元で。
舌打ち混じりに自分の子供の性別について話される。
……なんで女に産まなかったんだよ。
……そんな言い方するんだったら、産まなければよかったわ。
……名前とか服装で女の子に見せてもいつかは限界がくるだろうな。
……そうね。でも寝ている間にホルモン注射してるから身体と声だけはそれなりには
……投薬も続けているだろうな。
不満を漏らす声が、聞きたくない、拒否したい内容なのに自分の耳は一語一句漏らさず拾い上げた。
暗転。
暗転とはこの事なのだろう。
シーツ越しに感じていた青白い月光は青白さを失い急に墨色にくすむ。
今までサラサラ感じていたシーツは鉛の塊のように重くのしかかり手かせ足かせのように小さな身体に纏わりつき溶けかけの鋼のように熱く身体を焦がした。
ボクは……なに?
理不尽な叱責がシーツ越しに続く。
暗いシーツの中。ぼやけ霞んだ布越しの声は酷く鋭利な刃物と化し何色にも染まらない心を容赦なく刺す。
注射? 投薬?
次々と出て来る理解出来ない言葉が心羽を夢と現実の垣間を彷徨わせる。
「今晩も注射打っておけよ」
野獣のように低く唸る父親の声。それと同時に母親が自分のカバンを探る無気味な音が聴こえた。
心羽は注射を拒むように華奢な腕で小さな胸を抱え、膝を丸めて怯える。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
誰となく謝りの言葉を念じ、神に祈りを捧げた。教会で覚えたての祈りの言葉を必死に思い出しながら。
刹那。
シーツの隙間から光りが差した。
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