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小説「こはねとサンタクロース」4

こはねとサンタクロース

秋月十紅/著

痛い。骨格が軋む音。

水分を大量に含んだ体内の組織が。粘膜のようなドロリとした感覚が。

心羽が心羽であった全てを失うように。

もっと望まれる子になりたい。

全身が溶けて再構築されたような感覚で朝を迎えた。

くちん……

悪夢に魘されたのか、ベッドの上でもがくような格好で自分のくしゃみで目が冷めた。

心羽のひらひらのパジャマは胸元が大きくはだけており、乳白色の丸い肩から薄い胸まで朝日の元で眩く露になっている。

犬のお座りポーズで小さくあくびをするとボタンを一つ一つとめだした時。

「なにこれ?」

 元々肩口まであったミルクティ色の長い髪。今は長い髪所ではない、超長髪。

華奢な肢体の纏わりつくように身体を包む長いミルクティ色の絹糸が煌めいていた。

何度もそれを掬っては引っぱってと繰り返し自分の髪であること確認しながら、

「サンタのお爺さん?」

慌てて、サンタクロース宛に書いた手紙を見たが入っているメッセージカードを見た。

……残っているのは、サンタクロースと会える事を夢みて書いたカードのみ。

寝ぼけ眼で書いた手紙が消えていたのだ。

心羽はベッドに立上がって、首を傾げて、もう一度確認したが聖書の一ページをちぎって書いた手紙は見つからなかった。

足元に落ちていないか屈んで見てみるものの、落ちているのは自分のシルエットだけ。

シルエットは夢のように煌めくミルクティ色の髪とふっくら膨らんだドールドレスのようなパジャマだけ。

「ない」

心羽は、指差し確認した手をそのまま肩へ。横目で自分の手を追いながら肩を撫でるように、髪を払う。そして、滑るように流れる髪を見てから、自分の足の付け根を弄った。

「ない」

心羽が唯一性を判別できる摘める印がなくなっていたのだ。

「これで、パパ、ママに喜んでもらえる!」

飛び跳ねる心羽は天使のように。

あの悪魔は居なくなる。

 優しい両親が戻ってくるんだと飛び跳ねた。

*

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