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小説「こはねとサンタクロース」6

こはねとサンタクロース 6

著/秋月十紅

 あれから五年。

豪奢な洋館には、橘家の現当主関係の人と御子息。そして心羽の恩人つまりはお爺さん。前当主の柊翔(しゅうと)が住んでいる。心羽はその洋館の一室を成人を迎える二十歳まで間借りする事になっていた。

それは、朝日が惜し気もなく降り注ぐ一室。ホンジュラスマホガニーが使われたフローリングに腰板とケーシング。産みの親達が与えてくれた華飾された空間ではなく静謐でアンティークな空間。精妙な細工が各所に施されているものの嫌味がなく上品な部屋が今の心羽の唯一のプライベートゾーンなのだ。

現在十歳。幼少期の出来事といっても鮮明に覚えているあの一件。

アンティークな空間に産まれたままの姿ではなく『変わったまま』の心羽は、草木をモチーフにした可愛い額が付いたアンティークスタンドミラーと対峙している。

朝日で霧んだ部屋。白く細い足首からミルクティ色の髪の先まで映り真剣に自分の姿を確認する心羽が写し出されていた。

白レフレックスに包まれた被写体は、中世西欧で愛されたビスクドールのように妖艶な美しさを放っている。絹糸のように輝くミルクティ色の髪は腰辺りまで達し、それをかき分け申し訳なさそうに華奢な裸体が覗く。

丸い肩口に少しだけ膨らみを見せる乳房。背中から腰、尻からふくらはぎまで柔らかで優美で精妙な曲線を描く肢体。あの日まで確かあった脚の付け根の主張は今は小さく波打つだけ。

もう、あの頃。男の子には戻れないんだ——

心羽はそんな事を思いながら自分の身体を眺め、そして俯いた。

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