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こはねとサンタクロース9

 「こはねとサンタクロース」9

  秋月十紅/著

 拗ねたようにぷっくり膨らんだ頬が幼く可愛く見えても、それがクールなパンツスーツとアンバランスで微笑ましくても、それでも平静を保ち半眼で見上げていると、茉莉は膨らんだ頬をそのままに膝をパキッと鳴らし屈んできた。

 一見、キャリアウーマンな彼女にしては一世一代の冗談だったのかも知れない。

 幼い心羽はそう思い、餌を頬張ったシマリスよろしく、彼女にやさしく目線を合す。

 そして、黙ったまま心羽は両手を伸ばし茉莉の膨らんだ柔らかな頬を押した。そして、茉莉の首から垂らす身分証明書を見ながら、

「じゃあ、夏野茉莉さんのトナカイに乗せてください」

 茉莉のピンクのバラの蕾みから「びー」っと下品な音を聞きながら、フルネームでお願い。

 心羽製、強制変顔のまま、なされるがまま、茉莉の言いはる所の『トナカイ』に対して、『トナカイは鼻だけが赤いのよね? うん』に対して、最大のさぁいだいの疑問をぶつけてみる事にした。

「ところで、赤いものが何処にもありませんが……」

 聡明そうなのは本当に外見だけなのかも知れない。変顔の彼女が言い張る所では、少なくとも真っ赤な車を想像する所。

 橘家の一般駐車場には赤いものが見えないのだ。

柔らかな笑顔を浮かべ両手を目一杯広げて車をトナカイと呼称した爽やかな彼女がフラッシュバックする。

赤いスーパーセブンでも期待するって所。

 しかし、駐車場には見なれた黒塗りの車だけ。彼女の車と思しき、丸く屈めた背中を預ける車も漆黒の——

「艶黒……ロブスター?」

トナカイとか、サンタとかそんなメルヘン社会のモノではなく。

もっと、妖しい裏社会のマフィアがコレクトしているイメージ。とにかく、心羽から見えるのは大きく張り出したテカテカに磨かれたブリスターフェンダー。

それは、ロブスターの大ハサミの膨らみ。艶黒ロブスター。

「うぃばぶぼぼばぴひゃん! ばべぶびぃびゃばぶ」

 茉莉は言い終えてから、心羽の手を掴み変顔から開放。自分の頬を摩りながら、

「違うよ心羽ちゃん! マセラティシャマルよ」

言い直し、またまたピシッと人指し指を天へ向け車の説明を始めそうになる刹那、

「赤いものが何処にもありませんが!」

 心羽は語尾を強め茉莉の人指し指を掴んだ。

*

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