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夜を抱える人達の日向であって下さい。8

著/秋月十紅

えっ? 悪戯の対象はボクなんですか? 

えりこお姉さんにお尻を捕まえらたままでいるので逃げることができず目線にある綾乃さんの突き出たやわらかい部分が迫ってきた。

「……んんっ……やめてくだひゃいいー!」

 さらさらのシフォンブラウスを掻き分け胸の開いたライトブラウンの袖なしカットソーに安易に達する。あたたかく、やわらかな感触が顔いっぱいに拡がった。

 ボクは、この人達の一応オーナーなのに……おもちゃですよ。 これじゃ…… 

「めっ! 猫見たいにバタバタしないの! ……って ……綾乃! 何してるの!」

 ようやく気付いてくれた、えりこお姉さんの声が遠くで聴こえた。

 ボクは幼児ですか? 

「バスト責めよ。ふふっ」

調教? 

は……破廉恥です!

て……天国のかーさま……とーさま……ボクは…………堕ちそう……です。

ボクはこのお姉さん達の中で素敵なオトナになれるのでしょうか?

やわらかい闇から開放され、青の世界で悩む。

 視界が通常の色彩を取り戻すと近くの車止めに腰掛ける傍観者がいた。

マセラティ・ギブリを運転していたおしゃれなパーマスタイルにパリッとしたスーツに身を包んだ小柄な女性が三角座りをして小さく手を振っている。  

事の経過を客観的に楽しんいた様子。キャリアウーマンみたいな雰囲気なのに子供っぽく屈託のない笑顔を向けてくれている。

「唯ちゃん見てないでとめてよ……」

 唇を尖らせて言うけど傍観者を決め込んでいた小柄の唯ちゃんは、近くのロータスエリーゼに乗っていた見ず知らずのお兄さん達をつかまえて「百合だね……エロいね」「間違いないっスね」「いいっスね」という話していた。

自分で貼ればよかったです。

甘えたボクが悪かったです。

 その場に居づらくなったボクは、後悔しながらも三姉妹から目の届く様にブーツの踵から鳴る乾いた音が楽しくて少し高い位置からわざと践み降ろしながら石畳を歩く。

……末っ子はみんなおもちゃなのかな?

 少し歩くと大きなテラスがあるレストランが見えてきた。

同じ位置に同じくらいのコブを作った美麗な三人の女性とボクはそこへランチを採る為に向かって歩いている。

「ここのヴィクトリアンの制服かわいいって噂なのよー」

キャスケットの天辺をいじりながらえりこお姉さん。

上品に装飾された窓から見える店内に可愛い制服を纏ったウエイトレスさんたちが優雅にそれぞれの仕事をこなしているのが見えた。

「ウチのをリースしてもらってるんだ〜ふふっ」

 綾乃さんの会社が、制服をリースしてるのかぁ。

ボクは、後ろ手にぼんやり窓の中の人を見ながら歩く。

……確かに可愛い。

ローズの花柄が入ったダークボルドーの生地にウエストにリボンベルトがついたドレス。

リボンベルトからスカートの裾までふわっと広がっている。

「さっ! 入るよ!」

 えりこお姉さんがささっとレストランのエントランスまで駆けていき手を振っている。

職人の技が光る白くペイントされた木彫りケーシングが出迎えて、香ばしい香りが辺りを包んでいる。 

『いらっしゃいませー』

ケーシングを潜ると一斉に声がかかる。

「どうぞ」

先程のヴィクトリアンの制服に身を包まれた女性が案内してくれた。

ほぼ開店と同時だった為、他のお客様がいないみたい。

案内されたダイニングテーブルの天板には、見事な花柄の象嵌が入っていてゴブラン織りが張られた手仕事感あふれる椅子に腰掛る事を促された。

象嵌の入った天板には、オフホワイトの上品な花柄のランチョマットが敷かれている。

そして、銀のフォークとナイフが綺麗に並んでいる。

ウエイトレスのお姉さんが手際よくお冷をコースターの上に、お絞りを、ランチメニューを手早くそれぞれの手元に置き「女性四名様でご来店いただけましたので、レディースコースがお勧めですが」と案内してくださった。

ボクは完璧に女性ですか? ウエイトレスのお姉さん……と心で拗ねる。

「じゃ……それでいい?」

 一番ウエイトレスさんに近いえりこお姉さんが即決を求める。

「お任せするわ。ふふっ」

 言ってボクの顔をジッと見てくる綾乃さん。

「ボ……わたしもそれでいいです」

下を向いてボクも続く。

…………なんか恥ずかしいから見ないでよぉー。

唇だけ尖らせてから、上目遣いで綾乃さんを睨む。

も〜見ないでってばー

「私も同じ物でいいよ」

唯ちゃんは、パーマスタイルの髪から見せるスーツの肩口を震わしながら同調した。

そわそわして変な動きに写ったのかウエイトレスのお姉さんまでボクに注目する。

み……見るなぁ〜……

「しょ食後のデザートはどうなさいますか? 苺のショートケーキ、スライスされたチョコがのっているガトーショコラ、プレーンなチーズケーキ、パティシエ特製マカロンがお選らべ頂けますが?」

写真を見せながら順を追ってウエイトレスのお姉さんは説明してくれた。

「じゃ私から、苺のショートケーキ」

 定番を外さないえりこお姉さん。

「チーズケーキ。ふふっ」

 甘いものが少し苦手な綾乃さん。

「私も苺のショートケーキで……」

いつも苺をくれる唯ちゃん。

今日も期待していいんですよね?

「ボクは「「「「マカロン」」」で」

全員声を揃えて言ってからみんな笑う。

「いいじゃないかぁー 美味しいんですよ!」

そして、本当の家族の様なあたたかな空気に包まれたていくテーブルにボクは儚い夢を重ねてみる。

 みんなをあたたかく見守る長女は、やっぱり綾乃さん。

ちょっとわがままな二女は唯ちゃんで、しっかりものの三女はえりこお姉さんかなぁー。

こんな格好させられているけど、いつも一人で生活しているからみんなと一緒は本当に楽しい。

今日と明日は、存分に独占できる! たっぷり甘えちゃおー♡

あたたかい日射しを感じながら楽しい食事の時間は進んでいく。

少し拗ねながもボクは、マカロンの美味しさを永遠と説明していく事を忘れずに……。 


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