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夜を抱える人達の日向であって下さい。11

著/ 秋月十紅

 

「唯ちゃんナンパなんかしちゃって……ふふっ」

頬に手をあてて、駐車場をぼんやり見る。

化粧直しを済ませた私は、えりことひなたを待っている。

これは、使えるかも。

「あれ? 唯は?」

化粧室から出て来たえりこが落ち着きなく見回しながら聞いて来る。

ちょっとは気になるのかな? 唯の事が。

「あそこ」

 頬にあてていた手を、赤く妖しい雰囲気を放つ車を差す。

「何してるの?」

「さぁ? ところで愛しのひなたは?」

えりこの質問に答えずに愛しの姫の所在を聞く。

マセラティが駐車場の外周を徐行しているのを凝視しながらの私の耳へ両手を添えて話す。

「お手洗いよ」

「どっち側に押し込んだの? ふふっ」

コサージュ付きのキャスケットを被り女子トイレに引きずられていくひなたを想像した。

興奮したえりこがくちびるの端を小悪魔的に吊り上げる。

「もちろん♪」

私とえりこの不思議な空気を裂くように冷却ファン全開で大きく騒ぎ立てるマセラティ・ギブリが近付いてきた。

「お〜い……キャスケット・コサージュ姫は?」

 ふふっ 

 唯はカッコよくサングラスを片手に窓を開けえりこに話して来る。

「お手洗いよ……って! 店の子ナンパしてんじゃないわよ!」

妬いてる、妬いてる。

「唯ちゃん、可愛い子乗せてるね?」

「そうでしょう? 上から下まで可愛くて、きっと性格も可愛いよ! この子!」

 ふふっ

思った通りの返答。

「唯ちゃん、えりこちゃんラブなのに浮気? ふふっ」

頬に手を添えて楽しげに言う。

しばらくえりこで遊ぶことにした。

「こらっ! 綾乃! 見ず知らずの子が入る前でややこしいこと言わないで!」

 ちょっとだけ頬を桜色に染めたえりこが悲鳴をあげる。

「綾のん! この子もう見ず知らずじゃなくなったからお持ち帰りしたい!」

「な……何言い出すのよ! 唯!」

ふふっ

「わっ……私が無理を言ってしまって……」

 ビクトリアンの制服に身に纏ったお人形さんみたいな顔をしている少女が縦ロールをクルクルいじりながら申し訳なさそうに話に割ってくる。

「ごめんね! マセラティ乗りは女を口説く道具としてしか車を見てないから注意しなよ」

 えりこは運転席から屈み込み車内に首を突っ込みながら説教をしている。

「って、全国のマセ乗りに謝りなさい! ねー」

唯は、車高が低いマセラティ・ギブリに身を屈ませ、えりこの服の隙間から覗く胸の谷間を見ながら訂正を促しビクトリアンの制服に身に纏った子に同意を求めている。

唯は、えりこの形の良いふんわりと弾力性のありそうなマシュマロの双丘が見えた様で胸を目で追っている。

「ふんっ」

今のでやり取りで完璧に拗ねたえりこは鼻で不満を露にしている。

いつもふんわりした雰囲気なのに目がつり上がっちゃって可愛いっ……ふふっ

大きく手を振り回しインテグラーレに向かっていった。

「ありがとうございました。私はコレで失礼しますわ。お姉様方ご縁が逢えば又お会いしましょう」

場を読んでか律儀に挨拶して車から降りていく。

降り際に「またね♡」と唯はウインクして見送っている。

 唯はビクトリアンの姫を暫く眺めてから、寂しくなった助手席に目を落した。

「あれっ?」

「じゃ私も車持ってくるね〜ふふっ」

 私は唯の手に持っているモノを見て、顔を見合わせてからアルファロメオに向かって歩き始めた。

……えりこは今も自分に好意が寄せられていると思っているのかしら。

独占欲がつよいのね。去って行ったえりこの背中を見ながら思う。

 









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