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夜を抱える人達の日向であって下さい。16

著/秋月十紅

 

 …………ふふっ

「デキてしまいました」

朝食の用意を大方済まして私は残念そうに呟やく。

待ちかねたと言わんばかりに同時にテレビの前で眠っていた唯がむくりと起きる。

「こら〜! いつまで抱き合ってるの! いくらひなちゃんでも、えりこの貞操は渡さない!」

「唯ちゃん! そっち? ……ふふっ」

 唯は、襟元が少しはだけ少し長い袖のワイシャツのみで腰に手をあてて指を差している。

私はお味噌汁とおにぎりをダイニングテーブルに置き、えりことひなたの痴態に釘付けになった。

しばらく動かなかったえりこは嘘寝を諦め、ひなたと抱き合ったままの体制で起きようとしている。どうやら、ひなたの抱きしめて寝る癖。背中に回された手からはなかなか逃れられない、華奢な腕から想像できない技にかかっている。

えりこは四つん這いになり、ひなたはぶら下がる格好で髪が力なく垂れているから色々な想像ができる——……

 二人が妖艶に霞み『ひなたを押し倒してますポーズ』にも見える。又は、ひなたも腰に手を回してるから『放さないよポーズ』とか『もっと♡ ポーズ』とか『もっと深くお願いポーズ』などかなり濃い想像が膨らむ。

…………

「貞操って……唯! ごっ誤解される事を口にしない!」

 それが、嘘寝を止める引き金だったんだ。

「もういいでしょう? 胸のひなたを引渡してもらいましょうか? ふふっ」

 独占欲と母性が入り乱れるお姉さん顔のえりこを諭す。

「だめっ! ひなたは天使の顔してまだ寝ているのよ!」

「「へぇ〜天使の顔」」

 即答で私と唯は、独占欲の言葉のカケラをリピートする。

「うるさいっ!」

真っ赤な顔で言い返すえりこ達の近くまでくると、ひなたは長い睫毛を少し揺らせて頬には涙の後が残っている。

小さいピンク色の口は『はふー……はふー……』と動いているのが見えた。

 起きたかな? と思ったけど、えりこの胸に規則正しい吐息を吹き掛けている。

 そろりとえりこはお姫さまだっこして私が食事の用意したするダイニングまで華奢なひなたを運ぶ。 

「んんっ……かーさま」

ひなたはダイニングに付く頃に眠りから目覚め、夢心地に囁いている。

えりことひなたは目が合い、優しい目で見つめあう——……

ひなたは、真っ赤な顔に狼狽えた表情を浮かべながら。

「あ……ありがとうございます」

えりこの袖を掴み掠れた声を漏らしていた。

…………いーなぁ〜。美味しい所とられちゃった。

 

そして、旅行最終日がスタートする。

久しく訪れる朝のカゾクの時間が——……





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