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夜を抱える人達の日向であって下さい。18

著/秋月十紅

~Bozza~ デッサン 

 

 

シャッ……シャッ……

 固い鉛筆。軟らかい鉛筆。

八角柱に丸い芯から発せられる僅かなケント紙との摩擦の音だけが響く。

デッサンの授業は、無碍な一時。いつもいろいろな事を考える時間になっている。

細い線の固まりが形をつくる。

人間のカタチも——……

かーさま、とーさまは「デザインの基本はデッサンだよ」と言っていた。

デッサンを始めた小学生の頃は、その事をずっと考えながら手を動かしていた。

そして、未熟さを感じる。

少年と少女の間で揺れる日も、両親や友達と喧嘩した日も未熟さを感じていた。

 でも、今日も鉛筆を持つ。

硬筆の高い音しか聞こえない実習室。モチーフの対角線上に芽美ちゃんがいる。

ボク達は昼からの実習課程で度々顔を合す。

隣のクラスだから、朝の件以来、出会わなかった。

オンナノコの格好をしている事をばらされた様子はない。

脅迫めいた事を言われたけど、ボクには失う物が少ない。

一昨日、いろいろあったけど。あの件だけは口封じしないと——……

桜庭芽美は、有名だった。

男性に人気があるのに浮いた話が一つもない。

女生徒には甘く、反対に男子生徒には厳しく。いつも強気な態度。

同じデザイン課なので男子に厳しくしている芽美ちゃんを見る機会があった。

入学式の日、隣に座った子が芽美ちゃんだった。

うちのお姉様方が騒ぎたて先生に怒られているのを見て。

「あなたのご家族?」

 笑わないでやさしい顔で話してきてくれてた。

ボクにはちょっと不器用な女性にしか見えない。

芽美ちゃんを知っている親友に話すと、「お前が女だからだ」と言われ話が飛躍する。

冗談とわかるけど。冗談キツイよ? 

学校では芽美ちゃんしか知らない女の子の格好のボク。

秘密にしてもらわないと——……

シャッ……シャッ……



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