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夜を抱える人達の日向であって下さい。19

著/秋月十紅

  ~Dopo le lezioni~ 放課後  

 

 

譜面に目を通す。

[TARTANI]タルティーニのヴァイオリン・ソナタ。

色恋沙汰から聖職者に転身したカレも惚れるのだろうか?

左手を譜面に翳しながら思う。

この学校特有の場所として見晴しの良いパティオガーデンがある。

そこで噂があると聞いた。

綺麗な空が見える日には、蜂蜜色を輝かす麗人に出会えると。

転校初日に、いろいろ聞かされた。

さらっと風が吹き、落ち着きのある優雅な香りが流れてきた。

綺麗な髪——……

薄いプラスティックフレームの眼鏡越しに、潤んだ瞳にオレンジに輝く街が写っている。

写るオレンジがより輝きを放つ。

細く白い指先が手摺から身を乗り出し、髪のキラキラを盛大に振り撒いている。 

「うわぁ〜綺麗です」

温かな色が満ちる中、声変わりもしていない声が僅かに漏れた。

「落ちるなよ。おまえ」

少し離れた図書室のフレンチドアから低く渋い声がした。

「うん!」

 今度ははっきりと可愛らしい声を響かせる。

鮮やかなテラコッタが敷き詰められたパティオガーデン。

大理石を手作業でモザイク模様に仕上げられたテーブルトップ。

アールデコ調に仕上げられた支柱とアームチェアー。

その間を縫うように《商店デザイン別冊》というタイトルの本を手に持ちながら背の高い紳士的な男性は眩しそうに近付いていく。

肩辺りまで綺麗に手入れされたキラキラと輝く蜂蜜色の髪が刺激しているかの様に。

ロココ様式の校舎には人が疎らになりはじめた時間。

テラコッタに影を落す人も少ない。

寂しさを微塵も感じさせないあたたかな暖色に包まれている。

 ……何故、女性が男性の制服を着ているの?

そんな違和感の中で、ふと思う。

聖職者のあなたも惚れるのだろうか?



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