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夜を抱える人達の日向であって下さい。27

著/秋月十紅

 Comitiva ~Venerabilita~  樫山 唯 

 

 

イタリアの古城をモチーフに、石とガルバニウム鋼鈑を使いモダンに仕上げたデザイン[RistorantePrio]プリオ。

 私が専属で監修した産みの子だ。天井が高く食事スペースに大きなシンボルツリーがあり格子に組んだ梁にはシーリングファンが備えてある。

客席の奥には暖炉があり、その傍にはステージが備わる。

生演奏を聴きながら食事ができるという贅沢な空間設計がなされている。

「お疲れさま唯ちゃん、相変わらず手がキレイですね」

生意気にも業界用語で私を褒める姫の声が心に触れる。

綺麗な蜂蜜色をした髪の半分以上を白色のニット帽で隠し、長い睫毛に煌めく双眼。

ひなたは、私が買ってあげたオフホワイトのキルト生地のタイトなパーカーにチャコールグレーのタンクトップ。えりこが誕生日にプレゼントしたロザリオネックレスを揺らしながら、ひなたが自分で買ったチャコールグレーの花柄が刺繍されたフレアパンツを履いている。

オシャレで人の心を掴む要素を多分に持った逸材が手を振って近付いてくる。

自慢のブーツで石畳を叩きながら……

「ありがと。ひなちゃん! 先に入ってようか?」

綾乃とえりこは車を駐車しに行ってる。

ひなたの後ろで指をくるくるしている芽美が一歩前に出て爽やかな笑顔で言う。

「こ……こんばんは唯お姉様。素敵なスーツですね」

「サンキュー〜芽美ちゃんも可愛いコートだね〜」 

 入口からは香ばしい香と、チェロの演奏が聴こえる。 

 傍らに、上品に髭を携える壮年の紳士がひなたを見付け近付いてくる。

「あっ……オーナーご無沙汰しております」

 ひなたは、商工会の行事で一緒になる事があるというだけでなく、類い無い容姿と明朗な性格で有名人。プリオオーナーがわざわざ案内をするのもひなたの人柄が出ているなと冷静に観察してしまう。

「いえいえ……ボクの方こそご無沙汰してまして……それより凄く繁盛してますね」

「恐れ入ります。……では、ご案内します」

「あっ……ちょっと先にいきますね」

明らかに特別な感情によって案内されていることが伺える。

プリオのオーナーとひなたは一足先に店内へと向かった。 

「なんか学校でのひなたさんとは別人みたいですわ……」

「そう? 今度学校でのひなちゃんを教えて? できれば写真を添えて……」 

私の知っているひなたは、アウロラーレのオーナーとして街の商工会の行事に参加したり、ビルのメンテナンスの指示で業者とうろうろしている姿。それとデザイン事務所にアルバイトとして手伝いに来てくれているひなた。

 そして、貸衣裳ヴェスティーレで綾乃に着せ替え人形にされているひなた。美容室ジャンマーレでエプロン姿で掃除するひなたしか知らないから。

「はい、唯お姉様の満足行くまで撮影しますわ」

「お願い! それを魚に呑むから」

芽美は自分の縦ロールを撫でる様に触りながら約束してくれた。

もしかして、私の事を気に入ってくれてるの?

「なんで今は眼鏡してませんの?」

いきなり芽美は、素朴な疑問をしてくる。

毎日かわるがわる違う眼鏡をかけているのにって思うよね普通。

「あ……その事ね」

「日によって眼鏡を変えて、眼鏡萌の方たちを刺激する仕種で男女問わず人気者ですのよ?」

私が内緒話スタイルをとったら芽美は頭を少し傾けた。

形の良い顎のラインとつやつやの頬を眺めてから耳にくちびるを寄せる。

「それはね〜女の子に間違えられない為の小道具らしいよ。ひなちゃん曰く」

「えっそれってまさか……本人はそれを……」

芽美は耳を押え、少し頬を染めながら言う。

「内緒よ?」

「ふ……二人だけの秘密にさせてください」

可愛い。このころの年齢って秘密を共有するのが愛情の計器の一つだったんだね。

秘密を沢山共有するのが絆。

私も離れがたく繋ぎ止めておくものと思ってたなぁ。

「に……にやけないでください。私本気で……」

「さっ! 綾乃も……えりこも来たみたいだから入ろ!」

乗って来たイングラーレとは対象にふわふわした雰囲気に振りまきながら、えりこが歩いてくるのが見えたので芽美の背中を押し店に入る事を促す。

私とこの子が仲良く話していると妬くからね〜あのお嬢さんは……

旅行で大切なひなたを寂しくさせてしまう事件があったばかりだしね。

「あっ! えりこ可愛いピアスしてるね。何処の店でかったの? 一緒に買いに行こうよ!」

「今日は、誰のおごりかしら? ……ふふっ」

綾乃は、髪をいじりながら、冷たく言いながらすれ違う。

このオープンカー好きはロングガーディガンを羽織った巨乳美人を横目でやり過ごし、妬きもちやきのお嬢さんを見る。

「お疲れ。唯がロゴデザインしたプラティナーレよ。ひなたは店内?」

「そう♡……さっ入ろう!」

入口をちらっと伺っているえりこの手を取り姫の待っている席へ……


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